MY MINORITY

不器用ですが暇つぶしになれば。ちょっと情緒不安定な東大生

性自認が揺らぐこと、変わることについて 『心に性別はあるのか』を参考に

 以前、Xジェンダーの人が感じていることがよくわからなかったという記事を書きましたが、そのフォローをしておらず、差別しているかのような状態になっていたので、補足しておきたいと思います。
 
 私が最も疑問に思っていたことは、性自認が日によって変わるという話です。その人が言うことには、完全に女性として生きたい日もあるし、男性80%女性20%といった混ざり合った日もあるということでした。あまり想像がつかなかったので、本当かなという気持ちだったのですが、性自認は外から確かめようがないし、本人がそういうならそのように感じられるということでしょう。

 

 そこで思い出したのが、『心に性別はあるのか』という本です。この本は、中村美亜さんという研究者の方が、性別違和を持つ人々へのインタビューを基にして発表された論文が書籍化されたものです。性自認の揺らぎについての言及もありますので、参考にして議論を進めていくことにします。

 

 まず、トランスジェンダーの多様性について述べられています。過去の治療方針では、性別適合手術が本質的な解決策として提示されていたものの、性別に違和感があるが手術を望まない人々の存在が次第に明らかになったことがその一例です。日本における性同一性障害の治療ガイドラインでも、精神科領域の治療だけでは性別違和が解消されなかった場合に身体的治療に移行するとあり、全員が身体的治療を望んでいるわけではないという前提に立っています。こうして考えると、性同一性障害という病名の中でも、その概念の指す内容は変わってきたことがわかります。


 
 その上で、中村さんは、先天的に決まっているセックスに対して、ジェンダーは文化的構造物に過ぎないとして、アイデンティティは語義通り、変容しうるものであると述べています。確かに、ジェンダーアイデンティティーだけが生まれた瞬間から、全く揺らがないというのは不自然な気もします。そして、ジェンダーアイデンティティーが、ジェンダー二元論やアイデンティティの先天説を前提にしているなら改められる必要があると論じています。生まれた時の性別とは反対の性別であると自認し、その自認は揺らがないものであるという考え方に、専門の研究者の方が真っ向から反対しているのは、興味深いですね。
 
 インタビューでも、ジェンダーアイデンティティーが流動的で常に構築されるものであることが立証されています。そのインタビューの過程で発見された、ジェンダーアイデンティティーの再構築に大きく影響を与えるとされた5つの要素を引用します。

 

1.他人からの受け入れ
2.親しい人へのカミングアウト
3.性的体験
4.ジェンダーの多様性に対する認識
5.ジェンダーに関する知的理解

 

 言われてみれば、その通りだと思います。自身のジェンダーアイデンティティーに悩んでいた人が、周りから自分らしさを認めてもらい、さらに多様なジェンダーがあることを知って、自由に生きていけばよいと気付いたとき、苦しみは以前より軽減されているでしょうし、ジェンダーアイデンティティーも変容することは何らおかしなことではありません。私の周りにも、性別への違和感を持っているがゆえに性同一性障害だと思っていた人が、多様なジェンダーを知って、自身をXジェンダーと考えるようになった人がいます。

 

 以上の考察の結論として、中村さんは、ジェンダーアイデンティティーを「自分自身のジェンダー」という心理・社会的構築物として、つねに再形成を繰り返すものと定義します。だとすれば、性自認は揺らいでも当然のはずです。同時に、それぞれの個人が自分らしいジェンダーを作り上げていけばよいのではないかとも述べています。10人いれば、10通りのジェンダーアイデンティティーがあるということであり、その中には、性自認が日によって変わったり、揺らいだりする人がいても不思議ではありません。

 

 トランスジェンダーの中でも、典型的な性同一性障害ではない人々に関する情報は特に不足しています。この記事が何らかの参考になれば幸いです。