MY MINORITY

不器用ですが暇つぶしになれば。双極性障害で東大在学中です。

短歌ストレス発散法

一度でも我に頭を下げさせし
人みな死ねと
いのりてしこと

 

 これは、石川啄木が作った歌だ。短歌というと、奈良時代平安時代の貴族が、小難しい言葉で、恋や愛やと歌うイメージがあり、なんとなくとっつきにくい。そういう歌が嫌いなわけではないが、意味を読み取るだけでも難しいし、好き好んで読みたいと思わなかった。が、この歌は気に入っている。内容も分かりやすいし、なにより共感できる。著名な歌人が作ったと思うと、恨み深いのは自分だけじゃないんだなと思えてくる。

 

 この歌がきっかけになり、それから短歌について色々調べてみた。明治以降の歌人たちの中には現代語や口語で歌っているものも多く、外来語やオノマトペなど表現も多様で、ありとあらゆるものが詠まれていることを知った。お気に入りの歌の紹介は割愛するが、社会への憎しみや国家や富裕層を批判する歌など予想以上に何でもありの世界に強く惹かれている。次の穂村弘の歌などは、題材も表現も独特だ。

 

サバンナの象のうんこよ聞いてくれだるいせつないこわいさみしい

 

 短歌はもはや縁遠いものではなくなった。自分の気持ちを代弁してくれるものになった。心の中にある恨みつらみや不安が、短歌を通じて表現されることで、少し安堵を手に入れることが出来た。これはいい趣味だと思い、図書館で歌集を借りてきて、ざっと目を通し、その中で気になる歌があればメモし、自分だけの選歌集を作っている。まだ始めたばかりだが、この選歌集は、どこまでもネガティブで憎悪にあふれるが、なぜか居心地がいい。読み返すだけで、憂鬱な時間の暇つぶしにもなる。短歌は一首あたり数秒で読めてしまうので、小説ほどの長い文章を読むほどの気力がないときでも、この趣味は使える。

 

 最近はそれだけでは飽き足らず、自分で短歌を作りはじめた。短歌といっても、文法は破格だし、定型からも逸脱することが多く、固有名詞が並ぶ歌ばかりで、他の人がみれば意味が分からないと一蹴されそうだ。でも、それでいい。ムカついたことや悔しかったことを31音で表現すると、なぜだか胸がすっとするのだ。嫌なことがあっても、物や人にあたったり自己嫌悪に陥る前に、自動思考を一度立ち止まらせて、どういう言葉で表現できるかという方向にシフトさせる。希望を感じさせる歌が出来ることもあるし、ひたすら憎しみを綴った悪口のような歌になることもある。他人にみせないものだから、自由に思いのたけを歌に込められ、感情を歌の形で吐き出すことで、怒りが幾分かましになることが多い。瞬間的に他人を攻撃したくなった時も、スマホを開いて、メモアプリに歌を書きつけると、感情の高まりをやり過ごすことが出来る。私にとって、歌は箱庭療法における箱庭のようなもので、歌を作ることはアートセラピーに似た効果があるのかもしれない。

 

 同じことを楽しいと感じるかどうかは人それぞれなので、この方法が万人に通ずるとは思わない。けれど、短歌を読むのも作るのも無料で出来るので、もし少しでも気になっていただけたのなら、やってみるのも悪くはないのではないかと思う。せっかくだから、最後は、今日みつけたお気に入りの歌で締めよう。

 

少年貧時のかなしみは烙印のごときかなや夢さめてなほもなみだ溢れ出づ
                               『百花』坪野哲久